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ホーム > しんきん経済レポート > 2010年No.12 ピアノの生産台数と販売金額

ピアノの生産台数と販売金額

リーマンショック以降、生産台数が落ち込んでいたピアノの生産台数が回復している。折線グラフは、月間のピアノの生産台数を表している。昨年夏ごろをボトムに回復傾向にあることが分かる。リーマンショック前の直近ピーク時には届かないが、3、4、5月と3ヵ月連続で1万台を突破。前年同月比も3月67.3%増、4 月56.8%増、5月18.2%増と回復傾向を示している。

ただしこれはあくまで「台数」。企業収益に影響を及ぼす「販売額」が気になるところ。棒グラフで月間のピアノの販売額を表してみる。2008年秋のリーマンショック以降、販売額も大きく落ち込んでいる。販売額も生産台数同様に回復傾向にあるが、生産台数の回復ほどではなく、前年同月比で3月12.9%増、4月0.7%増、5月8.4%増と緩やかな回復となっている。

販売額の回復が遅れている理由は輸出販売額の回復の遅れにある。棒グラフは、上の薄い部分が国内販売、下の濃い部分が輸出販売を表している。見た目にも2008年の秋以降、輸出販売額の回復が進んでいないことが分かる。輸出販売額の伸び悩みは、1台当りの販売金額が回復していないことが原因。1台当りの年平均輸出額※1を見ると、2008年が209千円であったものが、2009年には166千円、2010年161千円と1台当りの単価回復が遅れている。ピアノ生産は縦型(アップライトピアノ)と平型(グランドピアノ)に分けられるが、輸出台数の9割近くを占め、国内外合わせた全販売台数でも8割近くを占める縦型の輸出販売単価の回復が販売額全体の回復を遅らせている。縦型の1台当りの年平均輸出額は2008年105千円、2009年92千円、2010年82千円と販売単価は減少傾向にあり生産台数の回復とは裏腹に減少している。輸出単価減少は、メーカーが、完成品輸出から、主要部品輸出(生産台数にカウントされている)へ経営をシフトさせていることが要因となっている。

工業製品は部品を生産出荷するよりも完成品とすることで、付加価値が高まる。主要部品の輸出もいずれ現地調達率が高まっていくだろう。ものづくり日本を活かした質の高い製品輸出が行える環境作りが期待される。

グラフ:全国2輪車生産、販売・出荷、輸出台数※1:2010年は1〜5月の5ヵ月の平均
静岡県楽器製造協会の資料を基に静岡県西部地域しんきん経済研究所作成

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