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産業別の就業者数増減

2010 年の国勢調査によると、浜松市に住む就業者(居住地ベース)は399,573 人。前回調査(2005 年)と比 較すると24,214 人減少した。今回の国勢調査では浜松市の総人口も1920 年の調査開始以降初めて減少に転じ ているが、就業者数は人口の減少幅(3,166 人)以上に減少している。「人は職を求めて移動する」ともいわれ ている。雇用の受け皿が減少すれば、それに伴い人口減少傾向が加速する懸念がある。

産業別にみると、製造業の減少幅が最も大きく、15,432 人減少している。調査時期(2010 年10 月)が、リ ーマン・ショックの余波が残っている時期であったため、一時的に減少幅が大きくなった可能性もある。しか し好況期や円安が続いた時期も含め過去20 年間、一貫して製造業の就業者数は減少している。

逆に、就業者を増加させている産業もある。医療、福祉の就業者は前回調査から5,582 人増加している。公 表されている資料からは医療、福祉の内訳を把握することはできないが、経済センサス等の類似資料を参考に すると、特に介護関連分野の就業者数が増加していると推測される。これから本格的な高齢社会を迎えるため、 介護関連分野は雇用拡大が期待できる分野といえよう。

ただ、介護関連分野の需要が拡大したとしても、求められる専門的知識・技術の習得には時間がかかる。ま た、常用労働者の平均月間現金給与額(全国2010 年)をみると、全産業の31 万円、製造業の36 万円(輸送 用機器に限ってみれば44 万円)と比較すると、介護関連分野は23 万円と低い。雇用のミスマッチはなかなか 解消されないだろうし、仮にミスマッチが解消されたとしても相対的に低賃金の産業にシフトするのだから、 浜松市全体の給与所得は減少してしまう。地域経済活性化や豊かな高齢社会を目指すため、需要・労力に見合 った介護関連分野の待遇改善が求められる。

もっとも、介護関連分野だけでは、他産業の雇用減少分を補いきれない。雇用吸収力が低下しているとはい え、製造業は地域最大の産業であることに変わりはないし、他産業への波及効果も大きい。既存分野の高度化 は勿論、医療・介護、農業分野との連携による新産業創出などにより、雇用吸収力を維持して欲しい。

産業別にみた就業者数の増減(国勢調査)

本稿は12月20 日静岡新聞「目で見る浜松経済」掲載予定です。
静岡県西部地域しんきん経済研究所とは遠州信用金庫と浜松信用金庫が共同で設立したシンクタンクです。

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