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浜松の出生率と人口減少対策

出生率(合計特殊出生率)とは、平たくいえば一人の女性が生涯に産む子供の数のこと。浜松市の出生率をみると1.57となっている。全国の1.38(単年直近資料では1.41)を上回っているほか、静岡県(1.53)、静岡市(1.40)と比較しても高い水準を維持している。なお、人口が安定的に維持するためには2.07の出生率が必要。浜松市の出生率は、相対的にみれば高いとはいえ、人口を維持できる水準ではない。

人口減少対策には3 本の矢が必要だ。1本目の矢は、「大胆な子育て支援策」。浜松市は「こども第一主義」を掲げ、子どもを生み育てやすい環境づくりに力を入れている。しかし、辛口な見方をすると、待機児童対策や子供の医療費助成など全国的に行われている施策を先進的に行っているに過ぎない。「3 人目以降の出産に、他地域より一ケタ多い出産祝い金の支給」「国の施策を待たずに幼児教育を無償化する」「子育て世代の住宅ローン利子補給」など大胆かつ異次元の支援策を検討したい。

2 本目の矢は「機動的な施策実施」。子育て支援策の拡充を検討する際、「規制が…」「国が…」「財政が…」など、様々な壁に突き当たるだろう。できない理由を探しだし、施策実施に消極的になるのではなく、「どうすればできるか」を考え、できることから機動的に施策を実施する必要がある。

3 本目の矢は、「都市間競争に打ち勝つ成長戦略」。日本は人口減少と同時に、一部の大都市に人口が集中し、地域間格差が益々大きくなっていく。仮に、浜松市の子育て支援策が功を奏し、出生率が向上したとしても、子供たちが大人になった時、浜松に働く場所がなければ、域外に若者は流出してしまう。人口減少対策は子育て支援と浜松の成長戦略の両輪が必要だ。魅力ある街づくり、都心機能の拡充、新たな雇用を生み出す産業施策など多面的な取り組みにより、人口流入都市浜松を目指す必要がある。

グラフ:合計特殊出生率の比較

本稿は6月5日静岡新聞「目で見る浜松経済」掲載予定です。
静岡県西部地域しんきん経済研究所とは遠州信用金庫と浜松信用金庫が共同で設立したシンクタンクです。

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