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従業員規模別のBCP 策定状況

BCP(事業継続計画)とは、震災や疫病などにより、通常業務の遂行が困難になる事態が発生した際に、事業の継続や早期復旧を目指すために策定される計画。主婦や学生にはあまりなじみのない用語だが、しんきん経済研究所が今年3 月に行った調査によると、中小企業経営者の約8割に認知されている用語だ。
浜松地域の中小企業におけるBCP策定率をみてみると、今年3月時点の策定率(予定含む。以下同じ)は19.1%となっている。認知度と比較すると策定率は低いが、東日本大震災前の2009年9月に行った調査(以下、震災前調査)と比較すると、策定率は7.8ポイント上昇しており、東日本大震災を契機にBCP策定が進んでいることがうかがえる。

従業員規模別にみると、従業員101人以上の企業の策定率は56.8%に達しているほか、51〜100人規模の企業の策定率も5 割近い。31〜50人規模の企業の策定率38.2%とやや低いが、震災前調査と比較すると策定率は20ポイント以上上昇している。一方、従業員規模が10人以下の企業の策定率は低く、震災前調査と比較した上昇幅も小幅にとどまっている。

従業員30人以下の中小企業の策定率が低いのは、「BCPについてよくわからない」と「日常業務が忙しく策定する余裕がない」が大きな要因。目先の問題に忙殺され、災害時等への対応は後回しになっているのかもしれない。しかし、経営資源に余裕のない小規模企業だからこそ、災害時における事業継続・早期復旧は、企業の存続をかける最重要課題と言える。また、BCPを策定することにより、自社の重要業務や急所を再整理できるため、平時の経営力強化にも役立つはずだ。
中小企業庁が公開している「中小企業BCP策定運用指針(第2 版)」の入門コースなら、必要最低限とされるBCPを、経営者1人で1〜2時間で策定できる。設備投資や人員計画等の判断よりも、短時間でできると思われ、小規模企業においても、積極的にBCPを策定することが望まれる。

グラフ:従業員規模別のBCP策定状況(策定予定含む)

本稿は7月3日静岡新聞「目で見る浜松経済」掲載予定です。
静岡県西部地域しんきん経済研究所とは遠州信用金庫と浜松信用金庫が共同で設立したシンクタンクです。

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