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工業統計と浜松のものづくり

昨年9月に公表された工業統計の2014年速報結果が、浜松の産業支援関係者に衝撃を与えている。
一つは、製造品出荷額等が前年比1,650億円減少し、3年ぶりに2兆円を割り込んだこと。リーマンショック前の2007年には3兆2000億円を超えていたが、当時と比較すると約6割の水準にとどまっている。

そしてもう一つが、浜松市と静岡市の製造品出荷額等の差がほとんどなくなってきていること。過去の推移をみると、2000年代前半は、浜松市と静岡市の製造品出荷額等の差は約1兆円あり、一時は1兆4387億円の開きがあった。ところが、リーマンショック後は差が縮小、2014年速報値では787億円にまで縮まった。長らく「商業都市静岡  ものづくり都市浜松」のイメージが定着していたが、このままでは「ものづくり都市浜松」の看板を降ろす日もそう遠くないかもしれない。

浜松側にも言い分がある。湖西市、磐田市なども含めた県西部地域でみると、県中部地域との差は未だ歴然としている。また、製造品出荷額等はあくまで工場からの出荷額を算出したものであり、研究開発やイノベーション活動は反映されない。例えば、先月ヤマハは本社工場跡地に新たな研究開発拠点となる「イノベーションセンター」を新設すると発表した(1月13日静岡新聞)。本社や磐田市などに分散している技術スタッフを集結、2,500人体制のイノベーション拠点となるが、製造品出荷額には反映されない。

もっとも、製造品出荷額等の結果が都合悪くなったからといって、別の基準で「ものづくり都市浜松」をアピールしても、傍からみれば言い訳にしか聞こえないだろう。持続的発展のために必要不可欠なイノベーションと足元の出荷額。この 2つが揃ってこそ堂々と「ものづくり都市浜松」を名乗ることができる。

図表 浜松市・静岡市の製造品出荷額等の推移

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