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景気の気は、気分の気

しんきん経済研究所が3か月ごとに実施する浜松地域を中心とした中小企業の業況DI(=景気が「良い」とする企業の割合から「悪い」とする企業の割合を引いた数値)の2017年3月調査は、全産業ベースで−1.6となった。2016年12月の前回調査(−11.0)と比べて9.4ポイントの改善となり、消費増税直後の平成26年6月調査より続いていた小幅の動きからは良い意味で脱却し、業況が「良い」と「悪い」が同数の0.0の間近にまで改善、過去をみてもかなりの高水準にある。

下のグラフはリーマンショック以降から直近までの推移、黒の実線は業況DIの実績値を表し、灰色の二重線は3ヶ月後の見通しを表す。近年の業況は東日本大震災やギリシャ危機、消費増税など業況が下振れすることはあったが、リーマンショック以後、改善傾向にある。ただし、業況DIの予想値をみると、実績値よりも予想値の方が総じて低いことが分かる。つまり、これの意味するところは、「将来の景気は今よりも悪くなる」、もしくは「先行きには楽観できない」ということである。予想値が実績値を大きく上回った2011年6月と2012年12月調査については、前者が東日本大震災による生産停止等による落ち込み、後者は尖閣諸島国有化による中国との関係悪化による落ち込みであり、見通しが明るいから予想値が上がったわけではなく、想定以上に業況が悪くなっただけである。

景気の「気」は、気分の「気」とも言われる。経営者が先行きが明るいと捉えれば、設備投資をしたり、新たな従業員を採用したり、従業員の給与や賞与を増やす。逆に、見通しは良くないと判断している限りは前向きな投資にはなかなか踏み出しづらい。そういう意味では、業況DIの水準が良くなってきているとは言え、予想値が実績値よりも低い以上、中小企業経営者のマインドは本格的には良くなってはいないと言える。投資が活発になり、本当に業況が良くなるためにも、先行きは明るくなると捉え、気分が高揚する中小企業経営者が増えていくことを期待したい。

図表 働き方改革と中小企業の対応

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