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コロナ禍で強まる人手過剰感

2020年12月17日

しんきん経済研究所が行っている中小企業景気動向調査の中で、人手の過不足感についても調べている。2019年9月調査から2020年9月調査(直近調査)までの1年間、人手DI(指数)の推移を業種別に比較したものが、業種別人手DIグラフである。人手DIは、「人手過剰」の回答割合から「人手不足」の回答割合を引いて算出している。指数がプラス水準なら人手が過剰、マイナス水準なら人手が不足していることを示している。

2019年9月調査を見てみると、製造業、卸売業、小売業、建設業、不動産業、サービス業のすべての業種で人手DIが−20潤オ−40と人手不足の状態だった。経営上の問題点でも「人手不足」が上位を占めており、人手不足感は全体的に高かったと思われる。ちなみに、浜松の有効求人倍率も1.42倍と1倍を上回っていた。

しかし、2020年に入りコロナ禍の影響で、雇用環境まで激変してしまった。2020年9月調査では、6業種の内、製造業、卸売業、サービス業がプラス水準(人手過剰)、小売業がゼロ、建設業と不動産業がマイナス水準(人手不足)のままだった。製造業では、コロナ禍の影響で国内需要の減少が生じ、工場を断続的に停止したため、生産が落ち込み、人手過剰になったと推測される。また、サービス業でも緊急事態宣言、休業要請、クラスターなどで、来店客が減少したことが響いている。一方で、他業種に比べて落ち込みの少なかった建設業、不動産業では、いまだマイナス水準であり、人手不足が続いていることがうかがえる。ちなみに、浜松の9月有効求人倍率も0.86倍と1倍を下回ってしまった。

このように、人手過剰感が強まっているが、これをチャンスととらえている中小企業もある。人手不足の時は、人材採用に苦労したが、コロナ禍で雇用環境が変化し、逆に採用のチャンスととらえ採用を増やしているのである。コロナ禍の収束はいまだ不透明であるが、生き残りをかけ、経営環境の変化に対応していくことが、今求められている。

図表 業種別人手DIの推移
出所:しんきん経済研究所(景況レポート)

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