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令和6年能登半島地震から見えたこと

2024年2月1日

令和6年能登半島地震の発災から約1か月が過ぎようとしているにも関わらず、被害が大きかった市町では損傷を受けた建物の数の把握すらできていない。発災後には能登半島の市町では、昭和56年(1981年)以前の旧耐震基準で建てられた築年数の長い住宅が多く残っていることが報じられていた。地震災害への備えは静岡県民の宿命であり、直近(2018年)の統計から石川県の被災地と浜松市の実情を比較してみた。

以下のグラフは輪島・珠洲市(石川県)の持ち家の新築年を耐震基準の改定のあった「1980年まで」と「1981年以降」に分けた戸数を示している。実に輪島市では61%の5350戸が、珠洲市では67%の3520戸が「1980年まで」に建築された家屋であった。輪島市では伝統工芸に関する施設や観光名所等が密集したことも一因かもしれない

珠洲市は2020年の国勢調査での高齢者人口の割合は50%を超えており、建て替えは困難であることが推察される。いずれにしても今回の強い揺れに襲われた地域には現在の耐震基準を満たしていない多くの家屋が存在していたことは事実であり、これらが倒壊したと考えるに難くない。これを浜松市と比較してみると、珠洲市と事情が類似する旧天竜区では「1980年まで」に建築された持ち家の比率が最も高く約47%であり、他の旧6区ではおおむね25%前後であった。

これらの資料を調べていて、もう一つ気づいたことは耐震診断の実施状況である。静岡県では2014年からの5年間で「1980年まで」の新築持ち家の10.5%が耐震診断を受けたが、石川県では同1.7%しか受診していないのである。もちろん、耐震診断を受診しただけでは家屋の強度は向上しないが、部分的な補強工事でも相応の効果はあるし、少なくとも地震の時には家屋からの避難の判断には役に立つ。耐震診断を受けて地震による我が家の危険度を認識しておくことが減災の第一歩であると考える。

 

図表 年別の新築持ち家の戸数と割合
出所:住宅・土地統計調査『平成30年住宅・土地統計調査』をもとにしんきん経済研究所作成

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