リサーチニュース リサーチニュース

ホーム > しんきん経済レポート >私たちの消費は10年前と何が変わった?

私たちの消費は10年前と何が変わった?

2024年5月2日

2023年の家計調査の結果、浜松市民の月間平均支出額は2014年の255,958 円から 233,966円へ21,992円減少したことが分かった。率にすると約8.6%の減少であり、この10年間のデフレ下で消費スタイルがどのように変化したのかを調べてみた。

下記の図は「衣食住」に直接的に関連する項目を、縦軸に支出金額の増減率を、横軸に支出額に占めるシェア(割合)の増減を家計調査の2014年調査からの変化をプロットしたものだ。横軸よりも上の項目は支出金額が増加し、縦軸よりも右側の項目は家計に占める割合が増加したことを示している。また、円の大きさは2023年の実消費支出額を示している。

まず、「衣」の支出額は30.7%と大きく減少した。家計に占めるシェアの変動は1%程度であるから、量販店やネット通販の更なる広がりなどの影響で購入額が減少したのではないかと考えられる。「住」については、浜松市は住宅用資材の購入額が国内でもトップクラスの水準であり、コロナ禍の外出自粛もあってDIY系の消費が伸びたことが「住居」の支出増加の主因となっている。

家計にとって深刻な変化は「食」に表れており、支出額は9.4%増加して家計に占めるシェアも4.5ポイント増加している。これは2022年からの円安や地政学上の諸問題に加えて長雨や高気温などの異常気象などによる食料品全般の値上がりの結果に他ならない。「食」は「衣」、「住」とは違い値上がりしたから我慢する、という訳にはいかないので家計でのシェアも上昇したのである。

これはエンゲル係数を上昇(悪化)させることになり、浜松市民のエンゲル係数は2014年23.2%から27.7%へと上昇した。いうまでもなく古典的ではあるがエンゲル係数は生活水準の指標であり、高いほど消費支出の自由度が低くなり金銭的な余裕が少ないことを表す。残念なことに、浜松市民の「こづかい」や「交際費」を含む「その他の消費支出」が10年間で約32%(18,686円)も減少したのはエンゲル係数上昇の裏返しである。

この10年間のデフレは良しにせよ悪しにせよ、物価の安定をもたらした。しかし、現在の物価の上昇局面では、すでに市民の生活水準の低下が進行している。企業経営者が従業員や自らの生活を守るために、できることはすぐにでも実行しなければならない時が来ている。

図表 0 年前と比較した2023年の浜松市民の消費スタイルの変化
出所:『2023年家計調査』家計収支編第2表を基にしんきん経済研究所が作成

しんきん経済レポート一覧へ